フレンチキスがディープキスではなく軽いキスとして浸透したその理由

フレンチキスがディープキスではなく軽いキスとして浸透したその理由

フレンチキスは舌を使った熱烈なキスのこと

2016年5月にgooランキングがこんなランキングを発表していた。

『ほとんどの人が実は間違って使ってた日本語ランキング』
1位、爆笑
2位、フレンチキス
3位、敷居が高い
(4位以下は割愛)
引用元:gooランキング

計22位までが発表されており、どれも「ハッ!」とさせられるものばかり。日本語の難しさを思い知ったよね。

なんて、今回はそんなランキング2位を獲得した「フレンチキス」についての話。

それというのも『キスの仕方で今後の愛され方やセックスの傾向がわかる!?男性の深層心理診断』にてこんなコメントを貰ってた。

軽いキスはフレンチキスではなく、バードキスと言います。
フレンチキスはディープキスと同意語ですよ。
こう言うまとめをされるくらいだから、その辺の最低限基礎的な知識は有ると思ってましたが、未だにフレンチの意味を、軽いキスと勘違いしてる人が居るのですね。
あとこの手の記事を書くなら、キスの種類についての元ネタ、ソースもリンクされた方が良いですよ。
根拠は?って、なりますから。

率直に、なんて攻撃的で凹むコメントなんだってうなだれたよね。日本におけるメジャーな意味に寄せて書いただけでこんな言われ方するんだなぁ、と。

文字が有する攻撃性と、情報を発信する側へ一方的に突きつけられる重圧を目の当たりにした。

ネットリテラシーっっっ!!!←
 

なぜ日本でフレンチキスが誤解されたまま浸透したのか

なんて言ったところで、正しい言葉を選べずそのまま掲載した私が悪い。猛省。

でもここである疑問が残った。なんで日本ではフレンチキスが軽いキスとして浸透してしまったんだろう?ってね。

ということで、今回は「フレンチキス」という言葉の歴史やその背景について調べてみた。もちろん

>元ネタ、ソースもリンクされた方が良いですよ。

と書かれたからには、徹底的に網羅した書き方をしていく。よって、いつにもまして外部リンク過多でお送りしマス。
 

フレンチキスという言葉について

フレンチキスという言葉について
歴史や背景に触れる前に。まずはフレンチキスという言葉の意味について調べてみる。

ディープ・キス(英: Deep kiss)またはフレンチ・キス(French kiss)は、一方の者の舌が他方の舌に触れ、通常、口の中に入る接吻である。
引用元:ウィキペディア「ディープキス

French kiss
舌を使った熱烈なキス
舌を相手の口の中に入れる、口を開けたキス
引用元:Weblio 英和辞典・和英辞典「French kiss

フレンチ‐キス 【French kiss】
舌と舌とをからめ合う熱烈なキス。ディープキス
引用元:国語辞書(大辞泉)「フレンチキス

ウィキペディア、英和辞書、国語辞書、どの辞書を確認してみても「フレンチキス」は舌を使ったディープキスのことであると断定されている。

こうなると尚の事、なぜ日本で「軽いキス」として浸透してしまったのか謎でしかない。

よって次は言葉の歴史や語源について調べてみる。諸説ある、とのことだったので今回はその諸説の中でも2つの説をピックアップしてみる。
 

フレンチキスはイギリス人の揶揄がはじまり?

調べ始めてみると、どうやら当時のイギリスとフランスの仲が悪かったことが原因であるとする説を一番多く目にした。

内容としては、フランス人が濃厚に舌を絡ませたキスをしているところを見たイギリス人が、フランス人を馬鹿にする意味で「French kiss=フランス人のキス」と揶揄するようになったというもの。

しかしこれらの説を唱えている人たちのソース元が主にcomplex fraction「『フレンチキス』の定義」だったため、信憑性には欠けるかもなぁと思っていたら。

凛太郎亭日乗「フレンチキスとはなんだ?」を読んでその考えが変わった。

なぜならフレンチキスについて調べながら、「French」についても調べた結果が下記の通りだったと記されていたから。

「French」ですと、「vi. 〔話〕(f-)フレンチキスをする;〔俗〕(f-) オーラルセックスをする」ととんでもない言葉が出てきます。「Pardon [Excuse] my French.〔話〕汚い言葉を使って申し訳ない」とか。「French letter〔英話〕コンドーム」ええっ?!(goo辞書)
引用元:凛太郎亭日乗「フレンチキスとはなんだ?

フランスは当時から非常に性的に発展した国として知られていたらしいので、オーラルセックスやコンドームという性的な代名詞として使われていたってことにはなんとなく合点がいく。

がしかし、「フレンチ=汚い」とはまた…。

フレンチキスという言葉が使われだしたのは1920年代からだと言われている。引用元:Dictipnary.com「French-kiss

1920年代といえば、第一次世界大戦における戦争状態が全て終了した頃。第一次世界大戦中はフランスとイギリス、両国は同じ連合軍として動いていた。引用元:ウィキペディア「イギリスの歴史

しかしそれまでの植民地をめぐる争いなど、諸々の根深い確執が同じ連合軍で動いていたからって払拭されるはずもない。だからこんな揶揄や俗語に「フレンチ」が使われているのかもなぁ、と。

あくまで推測だけどね。
 

フレンチキスはアメリカ発だった!?

フレンチキスはアメリカ発だった!?
日本語で書かれた諸説の中でも一番多く目にしたものを紹介したところで、海外メディアにも目を向けてみる。

すると海外の人気サイト「the two-way’」内の『A Kiss Is But A Kiss, But To French Kiss Is ‘Galocher’』という記事を和訳したラブ・リサーチ『日本人の「フレンチキス」と外国人の「フレンチキス」の違い』を運良く発見。

覗いてみれば

アメリカのニュース雑誌によると「フレンチキス」という言葉を広めたのは、第一次世界大戦後に欧州から戻ってきたアメリカ兵たち。

と記されていた。

もとより、当時は互いに舌を絡め合うほど情熱的で濃厚なキスのことをフレンチキス以外に「フロレンタイン(Florentine)キス」、イタリア中部にあるフィレンツェ人のキスと呼んでいた人もいたらしい。引用元:R25『「フレンチキス」の誤解と真相

しかし、やっぱりそこは性的に発展した国と考えられていたフランスの名が勝ったのだろう。フランスから持ち帰ったキステクニック、「フレンチキス」と名付けたアメリカ兵たちによって各国に広まったとされている。
 

日本に浸透した「軽いキス」についての諸説とは

さて、歴史的背景等々について触れたところで本題。

なぜ日本では「フレンチキス=軽いキス」として浸透してしまったのかについて。

これも諸説あるので3つほどピックアップしてみる。
 

①「心からのキス」に対して日本的解釈が入ったから

①「心からのキス」に対して日本的解釈が入ったから
フレンチキスを直訳すると「フランス人のキス」。当然、フランス人が互いに舌を絡ませる情熱的なキスのことをフレンチキスって呼んでいたはずもなく。

「恋人のキス」とか「舌を合わせるキス」などと呼んでいたらしい。引用元:R25『「フレンチキス」の誤解と真相

他にも「心からのキス」という意味があったという。

しかし舌を絡めたキスを日本人は下品で卑しい行為だと感じ、心からのキスとは言えないと考えてしまった。
引用元:complex fraction「『フレンチキス』の定義

よってフレンチキスは唇が触れるだけのキスとして浸透したのではないか、という説が1つ。
 

②フランス国や言葉の音のイメージから

何気なく”French(フランスの)”と聞くと、日本人はなんとなくオシャレなイメージを抱きがち。

それもそのはず。

フレンチレストランやフレンチトースト。
ファッションやインテリアにもフレンチファッションやフレンチインテリア、フレンチスタイル…

などなど、「フレンチ」はオシャレの代名詞と言っても過言ではないくらいの扱いを受けている。

そのためフレンチキスも「オシャレなキス」、軽いキスとしてイメージづけられたのではないか。

YAHOO!知恵袋などで、根拠となるURLは乗せずに個人的回答をしていた人達の意見としてはこんな感じだった。

あとこの「パリ市庁舎前のキス」という写真が世界的に有名になったことで、「フランスのキス=ロマンティックなイメージ(情熱的ではない)」として印象付けられたのではないかって話もあった。

パリ市庁舎前のキス
画像引用元:ときの忘れ物『ロベール・ドアノー Robert DOISNEAU

あと個人的にとても面白いと思ったのが、読書系フリーターの日常『なぜ「フレンチキス」の意味は誤解されたままなのか?』の記事内にあった【怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか】という著書を使った考察がある。

フレンチという言葉のイメージを発音・発声がどのように私達の脳に影響を与えているかってことに焦点を当てて書かれていて、思わず「なるほどー」と思った。

結論としても「フレンチキス」という音のイメージじゃ、到底ディープキスという本来の意味を連想するのは難しいとされている。

わかりやすく読みやすいので気になる方は是非。
 

③フランス人の挨拶をフレンチキスだと思いこんでしまったから

③フランス人の挨拶をフレンチキスだと思いこんでしまったから

戦後(中略)、日本に欧米文化が入ってくるようになり、日本人はアメリカ人が挨拶する時にキスする場面をよく見かけるようになりました。

この時アメリカ人が「フレンチキス」と言っていたことから、日本人の間ではフレンチキスとは軽いキスのことと認識されるようになったという説が濃厚なようです。
引用元:WELQ「フレンチキスはディープキスだった!16種類のキスの方法教えます!最高のキスをするためのポイントを徹底解説!」記事元が非公開となったためリンク先を外しています(16.12.01)

前述した「フレンチキスはアメリカ発だった!?」とは矛盾するこの話。

でもフレンチキスを広めたのが第一次世界大戦後に欧州から戻ってきたアメリカ兵たちだったとして。当時は情報を即座に確かめるためのツール(インターネットなど)が無かった状態で、全てのアメリカ兵たちが「フレンチキス=ディープキス」として使っていたとは限らなかったのではないかと思った。

ココから私の持論。

一因として考えられるのがフランス流の挨拶、ビズ(ビーズ)と言われるキス。いわゆるマウス・トゥ・マウスではなく、ほっぺたとほっぺたをくっつけてチュッとするもの。

会ったときと別れるとき、家族とは必ずする。
親しくなれば男性同士でも行われるという珍しい習慣。
引用元:ligne roset CARNETS DE FRANCE「レ・フランセーエラビーズ(フランス人とキス)

ともすれば、ディープキスよりも目のあたりにすることの多そうなこのキスを「フレンチキス」として持ち帰って広めていた人達もゼロではなかったのではないだろうか。

戦後の日本で、挨拶のキスを「フレンチキス」と言っていたアメリカ人がいてもおかしくなかったのかもしれないな、と。

日本でも同様のことが言えるように思えた。

挨拶でキスをするだなんて現代の日本でも考えられない。そんな衝撃こそがフレンチキスというキスの意味を固定化させてしまったのではないか、ってね。
 

日本人にとってのフレンチキスとは

でも本当のところ、「フレンチキス=ディープキス」が浸透しない理由としては英単語の意味が先行してしまう日本人らしさ(?)こそが一番の原因なのではないかと思わずにはいられない。

例えばto likeとかbefore longとかbe fond ofとか…個人的にはこれらのイディオムを覚えるのは本当に困難だった。なぜ単語の意味がイディオムになると変化するのかと、苦手意識バリッバリだったから。

フレンチキスについても、そんな感覚が働いて「フランス人のキス=ディープキス」という連想ができない。だから「軽いキス」としての誤用が絶えず、このような連鎖が続いているのかもしれない。

結局のところ、語源とか歴史とかを調べてみてもピンとくるものがなくて個人的にはこの説が一番しっくりくると感じてしまった。

そのため、この誤用を一掃しよう!と思うのであればフランス=エロい!って昔のイギリス・アメリカのような共通イメージを日本人全員が持たない限りムリなんじゃないかなぁ、とすら思ったりして。

あ。
時代を遡って、古い国語辞典で「フレンチキス」を調べたらどんな意味で掲載されているのかについてすごく興味がある。

今でこそ、色んな辞書では「フレンチキス=ディープキス」って掲載されているけれど。初掲載された時の辞典には「軽いキス」って誤用が書かれたりしてないだろうか。

今度図書館に行ったときにでも調べてみよう。
だって、じゃないとここまで誤用が浸透していてマスメディアでもちょいちょい使われ続けてるなんてやっぱりオカシイもの。
 

キスの種類として挙げられる名前のほとんどは造語である可能性が高い

キスの種類として挙げられる名前のほとんどは造語である可能性が高い
最後に。
このフレンチキスについて調べるにあたって、他のキスについてもちょいと調べてみた。最近よく目にする

*バインドキス
*スメルキス
*プレッシャーキス etc…

といったキスの種類の名前について。「フレンチキス」みたいに誤認されてるものがあるかもしれないと思ってね。

そうしたら。
英語圏では通用しない和製英語である可能性が多分に出てきた。

今回のきっかけになったコメント内にもあった「バードキス」も、英和辞典はもちろん国語辞典・英英辞典にも載っていない。あのウィキペディアにすら掲載されていない。実用日本語表現辞典にのみ該当があるものの個人で運営されているサイトのようなので除外

私と同様、疑問を持つ人もいたようで

アメリカ人がそういう言い方するのって聞いたことない。でもひょっとしてイギリス人だったら言うのか? とりあえず Google で “bird kiss” を検索 してみませう。(中略) Wikipedia の Kiss の項目にも出てこないし…
raurublock on Hatena「バードキスって何語?

bird kissはあまり英語では使わないように思います。
多分に和製英語的な感じがしますがどうでしょうか。
比喩として通じるとは思いますが一般的ではないようです。
YAHOO!知恵袋「軽いキスは、英語でなんと言いますか?(回答部分)

と言ったコメントもチラホラ見受けられた。

思うに、キスの教科書キスchというサイトの「キスの種類」といったページの情報をみんな鵜呑みにしているだけなんじゃないかと感じはじめた。(上記サイトにはソースなどの記載はない)

もしくはこのサイトで書かれたキスの種類を他サイトがあたかも当たり前のようにリライトされた記事が蔓延してしまっているのか…。まぁ私も似たような記事書いてるから大きな声で言えた口ではないのだけど

詳細に調べたわけではないから明言はできないけれど、これらは日本のインターネット上でつくられた造語である可能性が捨てきれないってことは知っておくべきなのかもしれない。

それにしても、こうやって新しい言葉ってできていくんだろうなぁと思う反面

そのうち「フレンチキス」のように外国で使うと恥をかくような言葉も、ちょっと権威のあるサイトが書いちゃえば一気に広まっていくんだろうなぁと感じたりして。

そんなリスク、外国で通用しない和製英語をつくるくらいならいっそのこと「日本でしか通じませんよ!」ってすぐにわかるような大和言葉風の造語にすればいいのにって思った。

…なんて、和製英語を作るより骨が折れそうだね。

 

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